NIRAIBLOG

建築現場監督のブログ Construction site director's blog

建設に携わる人のための建築業界・知識を綴るブログ Explains in detail the knowledge for the construction industry and those involved in construction

BIM導入における考え方の整理

日本の商習慣とBIM導入を阻害

今回は、日本と海外の設計における考え方を知る事で、日本でどのような事がBIM導入における障壁なのかを明確化し、導入を前提に仕事を進める際のポイントを整理するために記した。

 

用語について

・BIMとは、Building Information Modeling(ビルディング インフォメーション モデリング)の略称で、コンピューター上で3次元モデルを生成、属性データを(コストや仕上げ、管理情報など)与え、建築物全体のデータベース構築する事で、様々な工程(設計から解体まで)で有効利用するソリューションである。

・3DCAD(BIM)と2DCADの違いは、ドラフターのように一つ一つ線を自分で引いていくのか、データ内で用意された建築部品を配置し、建築図面を作るという点である。

 

BIM発祥の地アメリカを考える

建設業界は、単品受注生産建設となっており、決まりきったワークフローで建物を作る事が出来ない、加えて設計と施工の業務が明確に分かれており、両社の情報連携が難しい。そこに契約社会という背景も相まって、担当業務のみに責任が発生する特性上、あきらかな設計ミスがあっても不備があるままで、建物を作ってしまう事もあり、その問題を解決するため設計から施工、管理に至るまで同じプロットフォームで業務が出来るような工程としてBIMが誕生した。

 

BIM先進国のシンガポール

その名も「バーチャル・シンガポールPJ」

・シンガポールはICT技術を用いて生産性を上げることを国家戦略としている。その流れもあり、BIMの普及が促進され、2013年に「意匠設計」の一部案件に対し、確認申請をBIMで行うことを義務づけ、「構造設計」「設備設計」へとその対象を広げている。そして2016年には、国土全体をBIMモデル化する「バーチャル・シンガポール計画」が発表され、国土全体をBIMモデル化し、3D地図を用いた案内マップなどでの利用や人の流れ分析、3Dを活用した通風シミュレーションやエネルギー管理などが可能となり、その取り組みが注目されている。 

※2015年にはICT活用度ランキングでなんと世界1位。

 

 

日本でのBIM普及

普及のカギとなるファクターについて

・日本の建設事情は、非常に特殊で独自のルールで仕事を行う。それは、ゼネコンを中心とした棟梁型の一式請負であり、そのワークプロセスの一つとして、施工図というものがある。平面詳細図や矩計図などの施工図は、細部まで納まりをしっかりと検討するもので、日本の建築文化においてとても重要な図面であるが、海外では割と一般的ではない。その為、そもそも詳細図の作成を意図していないBIMソフト(3DCAD)では、その点が障壁となっている。

 

・日本では設計と施工が分離発注される場合でも、契約関係に縛られることなく、相互に補助し合う傾向がある。その為、BIM導入のメリットである情報の共有化の価値観をあまり感じられない点も障壁となっている理由の一つとして考えられる。

 

つまり、日本でBIMの普及が遅れている理由は、

・棟梁型のワークフローで本当に良いものを、独自の商習慣をベースに作るため、メリットを感じない。逆に言えば無償の企業努力で工事の品質を高めているという事となる。

・欧米型と違い、契約文化がベースとなっていないため、設計図面の不備に対する責任所在が不明確となっており、施工会社は、それらをカバーするために施工図で事前に検討し、施工に移す事がスタンダードとなっており、詳細図面の作図が苦手な3DCAD(BIM)のメリットが感じられず、2DCADで事足りるという背景がある。

・1950 年前後に一式請負を前提に国内法の整備が行われた(建設業法、建築士法、建築基準法)その為、設計・施工の責任所在(分界点)が曖昧のまま今日に至る。

 

導入するために整備すべき事

・用意された建築部品(Revitではファミリーと呼ばれる)が充実していればしているほど、建築知識が低くてもそれなりに設計が出来るため建築部品の整備が必須。

・2DCADに慣れた人がBIMに戸惑う点が、ファミリーを整える手間がかかる点である。しかし、その点がクリア出来れば、作図の手間が大きく省ける。一方で部品やテンプレートを整えるのにはとてもコスト(人時)がかかる。また、それぞれの建築事務所がそれぞれの図面表現のスタイルを持っているので、BIMの中に用意された一般的なものでは足りず、独自のものをイチから整える必要があり、BIMの場合それを回避すべく規格化が必要。

 

・BIMは、プラットフォームとしての考え方がベースとなる、つまり建設プロジェクトを取り巻く全ての関係者がBIM使用を前提にプロジェクトをスタートしないと、導入が一気に阻害されてしまう。具体的には建築・設備設計が完全にBIMで対応できても、構造設計がBIM対応できないと言ってしまえば、3Dでいろいろなものの干渉を検証しながら図面を整備できる点、整合した図面を速く描ける点等の導入のメリット(図面作成コスト・時間を削減)が一気に低くなる。

 

将来への懸念

・BIMの普及は、建築設計を簡略化出来る点が強みであるが、結果的にBIMで描きやすい単純な建物やディテールが増えデザインが同質化する事や設計者の詳細部分の検討不足や納まりの知識不足が懸念される。つまり、日本の建築産業の良さが失われてしまう事に繋がる可能性がある。

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紀尾井清堂

施主の要望は、「使い方は出来上がってから考えるので思ったように造ってくださいだったそうです」