労働安全コンサルタントの役割やその活躍の場などについて
更新:2021.01.17
1.そもそも労働安全コンサルタントとは?
そもそも、労働安全コンサルタントの名前を知らない人が多いのでは無いでしょうか。私も労働基準監督署へ機械等設置届(労働安全衛生法第88条第2項による届出)を行う際に、計画の社内審査における参画者の必要な資格等であったなと覚えてる位で、その存在を知らなかったです。
現場監督をやれば、必ず1回は提出するであろうあの届出です。
――――――――――――――――――――――――
安全衛生法 第八十八条(機械等設置届)
事業者は、機械等で、危険若しくは有害な作業。危険な場所において使用するもの、危険若しくは健康障害を防止するため使用するもの・・・・
上記のうち、厚生労働省令で定めるものを設置・移転・変更をしようとするとき、その計画を開始の日の三十日前までに、機械等設置届を労働基準監督署長に届け出なければならない。
参画者の資格(別表第九)
二 労働安全コンサルタント試験に合格した者で、その試験の区分が土木又は建築であるもの
――――――――――――――――――――――――
では、具体的な定義などはどうでしょうか?
2.労働安全コンサルタントの定義
役割を知る前にまずは、定義からです。参考条文は、労働安全衛生法の第九章にある事業場の安全又は衛生に関する改善措置等の第二節の(登録)です。
第八十四条 労働安全コンサルタント試験に合格した者は、厚生労働省に備える労働安全コンサルタント名簿に、氏名、事務所の所在地その他厚生労働省令で定める事項の登録を受けて、労働安全コンサルタントとなることができる。
試験合格だけでは、労働安全コンサルタントでは無いです。言い換えるならば「労働安全コンサルタント試験合格者」でしょうか?
続いて具体的な役割です。
3.具体的な役割
役割は、 第八十一条の(業務)にあります。労働安全コンサルタントは、労働安全コンサルタントの名称を用いて、他人の求めに応じ報酬を得て、労働者の安全の水準の向上を図るため、事業場の安全についての診断及びこれに基づく指導を行なうことを業とする。
また、行政による企業への安全衛生診断の勧奨と言うものもあります。
勧奨:よいことだとすすめて励ますこと。
厚生労働大臣は、重大な労働災害が発生した場合に、重大な労働災害の再発を防止するため必要がある場合、その事業場の安全又は衛生に関する改善計画(特別安全衛生改善計画)を作成し、提出すべきことを指示することができます。その際に、専門的な助言を必要とすると認めるときは、当該事業者に対し、労働安全コンサルタントによる安全に係る診断を受け、かつ、特別安全衛生改善計画の作成又は変更について、これらの者の意見を聴くべきことを勧奨することができる。
他にも安全衛生改善計画と言うものもあり都道府県労働局長は、事業場の施設その他の事項について、労働災害の防止を図るため総合的な改善措置を講ずる必要があると認めるとき、事業者に対し、当該事業場の安全又は衛生に関する改善計画(安全衛生改善計画)を作成すべきことを指示することができる。その際に、外部から安全の専門家として当該事業場のコンサルティングを行い、労働者の安全の水準の向上を図る事が社会的ニーズとして期待されています。
労働安全コンサルタントに必要な知識などについて
4.必要な知識
・産業安全に係る一般的な知識
安全管理(統括安全管理を含む。)材料安全、信頼性工学概論、運搬工学概論、人間工学概論、安全心理学概論、安全点検及び保守、安全教育、作業分析及び作業標準、強度計算、安全に関する各種検査法、安全装置、保護具、危険物の管理、防火、労働災害の調査及び原因の分析、労働衛生概論、事業場における安全衛生の水準の向上を図ることを目的として事業者が一連の過程を定めて行う自主的活動(危険性又は有害性等の調査及びその結果に基づき講ずる措置を含む。)
・産業安全に係る関係法令の知識
労働安全衛生法及びこれに基づく命令のうち産業安全に係るもの
リンク
・専門知識について
機械安全
原動機、動力伝導装置、工作機械、木材加工用機械、プレス機械及びシヤー、遠心機械、粉砕機及び混合機、ロール機、高速回転体、ボイラー、圧力容器、クレーンその他の運搬機械、産業用ロボット、計測制御概論、フェール・セーフ
電気安全
電気機器、高電圧設備、防爆構造、避雷設備、漏電、電撃、静電気、誘導電流、迷走電流、アーク溶接、電気工事、計測制御概論
化学安全
化学プロセス、反応安全工学、防爆工学、反応設備、蒸留設備、抽出設備、燃焼装置及び燃料、圧縮機、貯槽そう、配管、ガス溶接装置、計測及び制御
土木安全
土質力学、構造力学、工事用機械、足場、型わく支保工その他の工事用設備、明り掘削その他の工法、発破、落盤及び土砂崩壊の防止、計測制御概論
建築安全
構造力学、建築構造、足場、型わく支保工その他の工事用設備、工事用機械、施工法 墜落災害の防止、計測制御概論
5.活躍の場
第13次労働災害防止計画において労働安全コンサルタントの活用が期待されています。具体的に「労働災害防止計画」とは、労働災害を減少させるために国が重点的に取り組む事項を定めた中期計画で 2018 年 4 月~ 2023 年 3 月までの 5 年間を計画期間としています。
対象は、国、事業者、労働者等の関係者になります。
日本も少しづつ安全文化が浸透してきていますが、まだまだ「生産第一・品質第二・安全第三」の意識が残っているのも事実です。労働安全コンサルタントが安全の番人として、その役割・立場が強くなる事を期待します。経営者の立場になると、自ずと生産第一になります。安全第一が理念として、理解されていても実際の経営の中では実行されてない事が現実に多いのでは無いでしょうか。安全は、投資と言う意識が必要かと思います。また、労働災害が発生してしまうと、企業の存続にも影響しかねないと言うトップの意識が重要です。
最後に労働災害の発生による企業の責任について
6.労働災害発生による企業責任
・刑事上の責任(労働安全衛生法違反・業務上過失致死傷罪)
・行政上の責任(作業中止命令・行政処分等)
・民事上の責任(労働基準法等による補償)
・社会的な責任(社会的信用の低下)
最近では、民事上の補償額が大きくなってきているので中小企業においては、会社の存続に関わってきます。