Architect Engineer's blog 建築技術者のブログ

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コンクリート供試体の養生方法について

コンクリート供試体の色々な養生方法とその期間

2020.12.25更新

空中(気中)養生は無い

コンクリート検査の件で知り合いから連絡がありました。内容は、設計監理者が構造体強度推定用の供試体を現場空中養生としたいといっている。それでいいのかと・・・

 建築工事標準仕様書H28年度版では、こう書かれています。現場水中養生での結果が満足しない場合現場封かん養生。空中養生は無い!

話を聞いていると、どうも現場空中養生の方がより構造体と同じ条件となるのでは?と考えているようだ。

 

そもそも、養生方法はどこで決まっているか?

規定文書について

先ず初めに、建築物の規定は建築基準法になります。そして施行令 → 告示となります。

建築基準法施行令74条

コンクリートの強度

 鉄筋コンクリート造に使用するコンクリートの強度は、次に定めるものでなければならない。
一 四週圧縮強度は、1mm2につき12N(軽量骨材を使用する場合においては、9N)以上であること。
二 設計基準強度(設計に際し採用する圧縮強度をいう。以下同じ。)との関係において国土交通大臣が安全上必要であると認めて定める基準に適合するものであること。
2 前項に規定するコクリートの強度を求める場合においては、国土交通大臣が指定する強度試験によらなければならない。
3 コンクリートは、打上りが均質で密実になり、かつ、必要な強度が得られるようにその調合を定めなければならない。

 

続いて告示です。

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解説すると

1号では、現場水中養生を行い材齢28日供試体の圧縮強度の平均値が設計基準強度の数値以上。

2号では、構造体コア供試体材齢28日圧縮強度の平均値が設計基準強度の数値に10分の7を乗じた数値以上かつ材料91日の供試体の圧縮強度の平均値が設計基準強度の数値以上

※2号の所では、品質管理として直接構造体からコアを抜く事は現実的ではありませんね。なので、標仕では現場封かん養生としている。また、封かん養生は構造体コンクリートの強度発現を良く表す。

 上記の事から、基本は現場水中または現場封かん養生ですね。法的根拠からも・・・

     

 品質管理の要点   コンクリート技術者の必読本

上記の本が、バイブルとして分かりやすいです。

 

★通常、上記養生期間とは別に型枠脱型用(解体)として追加で供試体を何セットか取ります。養生期間は、強度促進実績データを沢山持っている生コン業者と相談し決定する形となります。(突貫現場は、沢山取り強度確認し型枠解体を早める傾向があります。)

 

気中養生(空中)の注意点

  それで今回の相談内容の問題が、この空中養生である。これは結論から言うと構造体強度から乖離した強度となってしまいます。その根拠としては実験データを見ると良く分かる。こちらのデータは、標準期における模擬構造体(1m角程度の大きさ)と供試体コアの養生別の強度比較データです。

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赤線は、材齢約28日です。どうでしょうか明らかに乖離していますね。なので現場空中(気中)養生がオススメ出来ない理由です。がしかし、これが夏期(暑中)になるとどうでしょうか?

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少し構造体と近くなりますが逆に構造体の強度が他の養生方法と乖離します。顕著に差が出ていますね。(空中に近い)これでは、どう構造体強度を推定するか悩みますね。

ポイント

※夏期の現場水中養生・封かん養生では、強度のトップ側となる(危険側)傾向がある。

 

強度のバラツキ原因

原因としては、養生中の温度及び周囲の水分条件です。

・養生中の温度⇒温度が高いとコンクリート内部で急速な水和反応が生じ、その水和生成物が不透水層を形成するため内部側で水和反応が起こりにくくなり長期強度が低下する傾向。

・水分⇒水和反応に必要な水が無い為にコンクリート硬化が進まないため強度低下。

 

標準養生という考え方

なので、逆に本当のコンクリートの本来発現する(ポテンシャル)強度と構造体の強度差を考慮した上でコンクリート強度を設定する構造体強度補正値という考え方が出てきました。

定義としては「標準養生をした供試体の材齢28日の圧縮強度の平均値と、コア供試体又はこれに類する強度特性を有する供試体の材齢91日の圧縮強度の平均値との差を基に0以上の数値として定められた値」。

 平成28年に先にでた建設省告示も改正され新たに標準養生も追加されました。

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 私個人的には、コンクリート供試体を標準養生とする事で受入検査と構造体検査一緒にする事が出来合理的ではなのかと思う。駄目では無く実際にそういう現場も少なからずある。JIS工場であれば問題は無いかと思う。

 ちなみに、コンクリートの強度は安全率をみられ2重で強度補正している。先ずは、調合管理強度(構造体補正)を算出し、それから調合強度(工場の不良率を考慮した強度)が定められている。生コン発注は、基本的に呼び強度発注方式なので最初の調合管理強度で発注している事となる。

※呼び強度=調合管理強度以上とする。

 

詳しくは、関連記事を参照

2020.4.15追記

 ゼネコンの最も基本的な技術はコンクリート工事と考えています。殆どが専門業者単独でその業種を完結出来ます。しかし、コンクリート工事は、関連する型枠・鉄筋・コンクリートの打設及び養生・資材の荷揚げ等、全てを現場でゼネコン主導の元計画していく為、技術者の果たす役割は非常に大きく各社の技術力の差がとても出る(分かる)工種だと思います。

 私もコンクリート工事担当責任者として、ご飯を食べずに朝早くから晩まで1,000m3以上の打設や様々な現場での問題、事件などの実務も十分経験し知識だけの素人から実力を伴う玄人にようやくなれたかと思います。